リビング・ダイニングに隣接する和室には、収納式の建具を採用し、フレキシブルに空間が使える。大きな掃き出し窓の外側にはウッドデッキも

北海道のカラマツを生かして 次世代の森をつくる住まい

旭川市・モデルハウス 

地産地消の家づくりに今注目される道産材

総面積の約71%を森林が占める北海道は、森の国。中でも人工林面積の75%を植林から35~55年を経たカラマツが占めています。
しかし長い間、「カラマツはねじれや曲がりが激しく、建材としては使いにくい」と建築の世界では敬遠されてきました。これまで多くの間伐材が、古くは炭鉱の坑道の整備、近年は使い捨ての梱包材などに利用されてきました。
北海道の風土が育んだカラマツは、道民にとっては大切な自然の恵み、宝物でもあります。道の「北方型 住宅」施策でも、地元材を活用した地産地消の家づくりが推奨されており、そこで注目を集めたのが、北海道ならではの豊富な森林資源カラマツでした。
近年、複数の研究機関、大学、企業などが連携をとり、狂いや割れを抑える乾燥技術を積極的に開発。建材への実用化も進み始めました。また、研究の進化とともに、官民が協働し、カラマツの建材利用を促進する取り組みも活発化してきました。

道内屈指の寒冷地が磨いた技術の結晶

旭川市郊外に2013年9月末に完成した「スクエアハウス」も、道産カラマツ利用促進モデル事業の一つとして建てられたもの。長閑な田園地帯に佇む建物は、ガルバリウム鋼板と道南スギを組み合わせた都会的な外観。しかし、室内に足を踏み入れると、カラマツの艶やかな木肌に包まれ、森の息吹を感じます。「カラマツの美しさを生かすため、伝統的な在来工法真壁造りを採用しています。天然の無垢材を豊富に使った住まいの魅力を知ってほしいと職人が腕を振るいました」と、代表取締役の新濱寿男さん。
寒冷地向け住宅の技術開発に熱心に取り組んできた新濱さんは、旭川市内にある北海道立総合研究機構(道総研)と関連する4機関と協力研究を行ってきました。その試みの中から、カラマツ材の新しい乾燥技術が開発されたといいます。「北方型ECOの認定基準をクリアする住宅性能も備えています。私たちのこれまでの研究のすべてがこの家に凝縮しています」。

若い世代にこそ勧めたい道産カラマツの家

延床面積約33坪の「スクエアハウス」は木造2階建て。30代の夫婦と2人の子どもが住む家を想定して、プランがつくられました。
1階はオープンなくつろぎ空間として活用できるLDKと和室、水まわり、2階には主寝室と洋室がレイアウトされています。室内の建具や収納などもカラマツを生かした造作、壁は余市町産の調湿効果に優れたゼオライトを用いた塗り壁仕上げ。自然素材と伝統技法を随所に用いた空間は、健康的な環境を保ちながら、表情豊かになっていくことでしょう。
「カラマツは、限られた予算でもこのように自然素材をふんだんに使った家づくりを可能にしてくれます。若い世代にこそ、その魅力を知っていただき、積極的に利用していただきたいと思っています」。住宅づくりにカラマツを積極的に活用することで、北海道の森林を育み、地域の活性化に役立つことも期待されます。これからの家づくりに、北海道の自然が育てたカラマツを生かしてみませんか。

■建築データ

□構造規模 木造(在来工法)・2階建て
□延床面積 108.48㎡(約33坪)
□主な外部仕上げ 屋根/■長尺板金、外壁/■ゼオンサイディング一部道南杉、建具/玄関ドア:■木製、窓:■樹脂サッシアルゴンガス入りペアガラス
□主な内部仕上げ 床/■道産カラマツ、壁/■余市産ゼオライト、天井/■ゼオライト、道産カラマツ合板
□断熱仕様 ■ 基礎/■ポリスチレンフォーム(B3)100mm、壁/■グラスウール16kg(外105mm内90mm)、屋根/■ロックウール400mm
□暖房方式 ■灯油温水セントラル

■工事期間 平成25年6月〜9月(約3.5ヵ月)

  • 北海道のカラマツを生かして 次世代の森をつくる住まい

    210㎜の付加断熱を施した厚い壁で、厳しい寒さを防ぐ

  • 北海道のカラマツを生かして 次世代の森をつくる住まい

    余市町のゼオライトを採用した塗り壁

  • 北海道のカラマツを生かして 次世代の森をつくる住まい

    開放的なLDKは、カラマツの持ち味を生かすため真壁造りに。丹念に張られた天井、梁のラインが美しい

  • 北海道のカラマツを生かして 次世代の森をつくる住まい

    対面式キッチンの背面には、カウンター付き造作収納も完備。キッチンには吸気で涼しい環境を保つ保冷庫と、排気で嫌な臭いを外に出すゴミ置き場をしつらえてある

  • 北海道のカラマツを生かして 次世代の森をつくる住まい

    和室からリビングを見る

  • 北海道のカラマツを生かして 次世代の森をつくる住まい

    ドアを開けた瞬間に、カラマツの木肌に包まれるような玄関。大容量のシューズクローゼットもカラマツを生かした造作

  • 北海道のカラマツを生かして 次世代の森をつくる住まい

    2階の階段ホール。正面には4.5畳と7.5畳、ふた間続きの洋室が設けられている

  • 北海道のカラマツを生かして 次世代の森をつくる住まい

    アクセントに用いた道南スギが、都会的でシャープな外観デザインに温かなニュアンスを与える